メインテーマは「新型コロナウイルス感染症と社会保障」(2021年版厚生労働白書)

厚生労働白書」は、厚生労働行政の現状や今後の見通し等について、広く国民に伝えることを目的にとりまとめられています。


厚生労働省は7月30日、2021年版の厚生労働白書を公表しました。テーマは「新型コロナウイルス感染症と社会保障」で、新型コロナ感染拡大による国民生活への影響とその対応について、仕事や収入が急減した人への対応、孤立の深刻化、女性への影響、子どもへの影響、医療・福祉現場への影響を分析しています。
今週のWeeklyでは、今後の雇用政策を考えるために、厚生労働白書から、仕事・収入への影響を振り返ってみたいと思います。

〇2000年4月に休業者が急増しました。以降、完全失業率は緩やかに上昇しています。

〇しかしながら、リーマンショック時(ピーク5.5%)に比べると、今回はピーク時で3.1%と完全失業率の上昇は抑制されています。

〇これは、雇用調整助成金や休業支援金等の雇用維持支援施策が奏功したためとみられます。

●コロナ禍における主な休業者支援
・雇用調整助成金の特例措置(助成内容・対象の拡充)
・緊急雇用安定助成金の創設(雇用保険被保険者以外の労働者に関する雇用調整助成金に準じた助成)
・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(新型コロナウイルス感染症等の影響により休業させられた労働者のうち、休業手当の支払いを受けられなかった労働者に対し給付)
・小学校休業等対応支援金(委託により個人で仕事をする者への給付)
・国民健康保険等における傷病手当金への財政支援

コロナ禍でわが国経済は非常に厳しい状況に追い込まれています。GDPが1%下がると5.5万人の失業者が発生します。失業率が1%上がると2,500人の自殺が出るとのデータもあります。こうした中、全国で最低賃金が平均28円引き上げられますが、最低賃金の上昇は人件費のアップにつながり、中小企業・小規模事業者の経営が悪化するという状況も考えられます。とりわけ下請業者や農業従事者、女性の勤労者に影響が及ぶことが懸念されます。国の補助はリーマンショックに比べて厚くなっていますが、さらなる支援を検討していく必要があるかもしれません。