Ando Weekly 2021.12.12

財政制度等審議会とは、国の財政にかかわる重要な事項について調査・審議することを目的とする、財務省の諮問機関です。財政制度、国家公務員共済組合、財政投融資、たばこ事業等、国有財産の5つの分科会があります。

先週に続いて、財政制度等審議会・財政制度分科会が11月8日に発表した見解について考えてみたいと思います。
厚労省では、医療経済等の実態を明らかにすることを目的に「医療経済実態調査」を実施しており、診療報酬改定の基礎資料とされます。当該調査に対して財務省は、「サンプル数の少なさに加え、サンプルが調査の度に入れ替わり経年的な把握が困難」として抜本的な見直しを求めました。

こうしたなか、11月24日の中央社会保険医療協議会において「第23回医療経済実態調査」が公表されました。

(一般企業全体 報告書p16)

 

2019年度

2020年度

2020年度

(含む補助金)

損益差額

▲104百万円

▲225百万円

13百万円

同率

▲3.1%

▲6.9%

0.4%

 

コロナ関係補助金を除いたベースで、2019年度から2020年度にかけてマイナス幅が拡大、コロナ補助金を含めてかろうじて黒字を確保しています。

この医療経済実態調査が、本当に財務省が指摘するように信用に足らないものなのか、他の機関が行った調査と比較してみたいと思います。
まず、福祉医療機構(WAM)の調査レポートを見ると、一般病院(コロナ患者受入れ)の医業利益率は、2019年度の1.2%から2020年度には▲2.0%へと▲3.2ポイント低下、補助金を含むベースで0.7%と若干の黒字となっています。


 
次に、日本医療会・全日本病院協会・日本医療法人協会が実施した病院経営状況調査を見ると、医業利益率は、2019年度の▲1.8%から2020年度には▲6.1%へと大幅に低下、補助金を加えて0.3%とわずかながら黒字となっています
 

主だった調査すべてにおいて、病院の利益率は、通常医療部分で2019年度から2020年度にかけて▲3~4%ポイント低下、コロナ関係補助金を加味してようやく若干の黒字を確保、という結果が出ていることが分かります。
日本医師会も、「医療経済実態調査は、長年、中医協において改定の都度、必要な調査項目を追加するなど改善を重ねてきたものである・・・引き続きその時々の課題に応じて改善しながら、改定の基礎資料として医療経済実態調査を行って行くべきである」との見解を述べています。
こうしてみると、「医療経済実態調査」が実態を反映していないとする財務省の見解は当を得ていないと考えるのが妥当ではないでしょうか。