Ando Weekly 2022.6.26

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念です。

最近、医療分野におけるデジタルトランスフォーメーション=医療DXが注目を集めています。以下は、骨太の方針2022からの抜粋ですが、昨年までは使われていなかったDXという言葉が3回も登場しています。

●医療・介護分野でのDXを含む技術革新を通じたサービスの効率化・質の向上を図るため、デジタルヘルスの活性化に向けた関連サービスの認証制度や評価指針による質の見える化やイノベーション等を進める。

●データヘルス改革に関する工程表にのっとりPHRの推進等改革を着実に実行する。

●オンライン資格確認について、保険医療機関・薬局に、2023 年4月から導入を原則として義務付けるとともに、導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する支援等の措置を見直す。

●2024 年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し、さらにオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止を目指す。

●全国医療情報プラットフォームの創設

●電子カルテ情報の標準化等

●診療報酬改定DX

●政府に総理を本部長とし関係閣僚により構成される「医療DX推進本部(仮称)」を設置する。

●オンライン診療の活用を促進するとともに、AIホスピタルの推進及び実装に向け取り組む。

医療DXを一言でいえば、データとデジタル技術の活用による医療モデルの変革ですが、医療におけるデジタル化の代表は電子カルテです。下表は、電子カルテシステム等の普及状況を見たものですが、電子カルテの普及率は、病院で57.2%、診療所で49.9%にとどまっています。

こうした状況下、厚労省の健康・医療・介護情報利活用検討会 医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループでは、2019年に設けられた「医療情報化支援基金」を活用した、電子カルテ導入に対する支援が議論されています。

私は、電子カルテが医療機関の半分程度にしか普及していないのは、経済的な問題に尽きると考えています。電子カルテ投資は、中小病院でも導入時にイニシャルコストが数億円、ランニングコストとして毎年数千万円と、経常利益を上回る費用を要するのが実状となっています。

2000年の介護保険開始時には、国が介護ソフト導入費用を全額補助したことにより、デジタル化が急速に進展しました。医療DXを真剣に推進するのであれば、全額とは言いませんが、7割程度は補助する思い切った政策が求められるのではないでしょうか。電子カルテの導入・標準化が進み、医療機関間の情報共有がなされるようになれば、予防医療の普及や重複・多剤投薬の削減により医療費も抑制されるので、財源を確保することはできると思います。

 

提言 電子カルテの導入・標準化を推進するため、初期投資およびランニングコストの7割程度を国費で補助する仕組みを早急に構築する。