Ando Weekly 2022.6.5

地域包括ケア病棟は2014年度診療報酬改定で新設された病棟類型です。厚生労働省によれば、地域包括ケア病棟の役割は「急性期治療を経過した患者及び在宅において療養を行っている患者等の受け入れ並びに患者の在宅復帰支援等を行う機能を有し、地域包括ケアシステムを支える役割を担うもの」とされています。

(注1)もともと地域包括ケア病棟は、全日本病院協会(猪口雄二会長)はじめ日本医師会・四病院団体協議会が提案した「地域一般病棟」がもとになっている。

(注2)地域包括ケア病棟協会は、3つの機能に加え、化学療法や手術等の「在宅等予定受入機能」を提唱している。

平成29年7月時点と令和2年7月時点の届出病床数を比較すると、地域包括ケア病棟は62,869床から92,829へと3万床近くも増加しており、急性期病棟からのシフトが進んでいます。

2022年度診療報酬改定では、とりわけ②の在宅療養患者の緊急入院、すなわち高齢者を主体とした慢性期救急が強化されました。

地域包括ケア病棟は療養病床でも認められていましたが、今回の改定で療養病床は原則95/100の点数を算定、ただし、救急告示あり/自宅等から入棟した患者割合が6割以上/自宅等からの緊急患者受け入れ3月で30人以上のいずれかを満たす場合は100/100の点数とされました。

治せる病気は確実に早く治す、治すのが難しい場合はできる限り満足して療養してもらう、というのが30年以上前からの私のポリシーです。2005年に私が大会長で開催した第13回日本療養病床協会全国研究会東京大会において、初めて「慢性期救急」という言葉を使いました。療養病床で救急を受けられるのかという批判はありましたが、私はせめて、療養病床から退院した患者さんが自宅で急変した場合には受け入れたいと強く思ったのです。

私が副会長を務める日本慢性期医療協会(武久洋三会長)は、慢性期病棟であっても救急指定をとり、積極的に高齢救急患者を診察する地域包括ケア病棟を目指しています。自治体は療養病床を持つ病院でも積極的に救急指定を行う、厚労省には自治体を指導することをお願いしたいと思います。

慢性期病院には急性期病院からの医療ニーズの高い早期転院患者や医療介護ニーズの高い重介護者など様々な方が入院しています。しかし、看護配置は20:1と急性期病院に比べて低く、マンパワーは不足している実態です。せん妄や認知症の対応に関しても様々な取り組みを行っているため、慢性期救急患者の受け入れを常時行っていくことが難しいのも現実です。緊急入院受け入れ率等の基準を設定して、基準を満たせば加配人員に対する予算を付けるなど、慢性期救急に力を入れる病院を支援していくことが、医療政策上も求められているのではないでしょうか。

提言1  厚労省は自治体に対して、療養病床を持つ病院が高齢救急患者に取り組む場合、積極的に救急指定を行うよう指導してほしい。

提言2 慢性期救急患者に取り組む病院に対して、緊急入院受け入れ率等の基準を満たせば加配人員に対する予算を付けるなどの支援を実施する。