Ando Weekly 2022.7.10

少子化社会対策白書は、少子化社会対策基本法第9条に規定する「少子化の状況及び少子化に対処するために講じた施策の概況に関する報告書」であり、政府から毎年、国会に提出されます。

政府は6月14日、令和4年版の少子化社会対策白書を閣議決定しました。今回の少子化社会対策白書では、冒頭、少子化対策の現状が分析されています。

令和2年(2020年)の出生数は、84万835人となり、過去最少を記録しました。

合計特殊出生率は1.33と、前年比0.03ポイント低下しています。合計特殊出生率とは、1人の女性が出産期と想定した15歳から49歳までに産む子どもの平均的な人数を指します。年齢構成の違い等を取り除いた指標であり、過去のデータや海外との比較が可能になります。合計特殊出生率は2005年に1.26で底を打った後、団塊ジュニアが出産適齢期に入ったために2015年の1.45まで上昇していましたが、それ以降は再び低下傾向に転じています。

最近の政府の少子化対策は下図の通りです。

2020年5月29日に閣議決定された第4次となる新たな「少子化社会対策大綱」は、「希望出生率1.8」を実現するため、①結婚・子育て世代が将来にわたる展望を描ける環境をつくる、②多様化する子育て家庭の様々なニーズに応える、③地域の実情に応じたきめ細かな取組を進める、④結婚、妊娠・出産、子供・子育てに温かい社会をつくる、⑤科学技術の成果など新たなリソースを積極的に活用する」の5つの基本的な考え方を明示しました。

2020年12月15日に閣議決定された「全世代型社会保障改革の方針」では、長年の課題である少子化対策を大きく前に進めるため、不妊治療への保険適用の早急な実現、待機児童の解消に向けた新たな計画の策定、男性の育児休業の取得促進といった少子化対策がトータルな形で示されました。

こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」(2021年12月21日閣議決定)に基づき、2020年2月25日に「こども家庭庁設置法案」が通常国会に提出されました。こども家庭庁においては、これまで内閣府や厚生労働省等に分散していたこども政策の司令塔機能を一本化し、各省より一段高い立場から、少子化対策を含むこども政策について一元的に企画・立案・総合調整を行うことになります。

少子化に対しては国も様々な施策を講じてきていますが、それでも合計特殊出生率が1.33まで低下するなど厳しい状況が続いています。目標として掲げる希望出生率1.8は1984年(1.81)以降、実現できていません。

一億総活躍関連の会議等でも発言してまいりましたが、私は、子ども1人の出産に1,000万円の手当を支給する(地方移住して子育てする場合はプラス1,000万円)くらいの思い切った支援策を検討するべきではないかと考えています。年間の出産数が100万人まで増加しても予算は10兆円程度であり、日本の将来に向けた根幹的な投資と考えれば決して過剰とは言えないのではないでしょうか。

 

提言 子どもを産むモチベーションを上げる観点から、子ども1人の出産に1,000万円の手当を支給する。実際の導入に際しては、1人目、2人目、3人目で段階的に金額を引き上げる、100万円程度でスタートして効果を検証する等の工夫を凝らすことで、まず制度をスタートさせることを優先する。