Ando Weekly 2022.7.17

政府では、人生100年時代を迎えライフスタイルが多様となる中、お年寄りだけではなく、子どもたち、子育て・現役世代の安心を支えていくため、働き方の変化を中心に据えながら、全世代型社会保障を検討しています。

2021年11月にスタートした全世代型社会保障構築会議の「議論の中間整理」が2022年5月17日に公表されました。

同会議は、高齢者人口がピークを迎えて減少に転ずる2040年頃を視野に入れつつ、新型コロナ禍で顕在化した課題を含めた短期的課題とともに、中期的、長期的な課題に対して、「時間軸」を持って取り組んでいます。

議論の中間整理」の中から地域共生社会に関する部分をご紹介します。

〇課題と目指すべき方向

●孤独・孤立や生活困窮の人々が地域社会と繋がりながら、安心して生活を送れる「地域共生社会」づくりに取り組む。

●「住まい」をいかに確保するかは、老齢期を含む生活の維持にとっても大きな課題。制度的な対応も含めた検討が求められる。

〇今後の取り組み

ソーシャルワーカーによる相談支援、多機関連携による総合的な支援体制。分野横断的な取組を進める。

●住民に身近な地域資源を活用しながら、地域課題の解決のために住民同士が助け合う「互助」を強化。

住まい確保の支援のみならず、地域とつながる居住環境や見守り・相談支援の提供も含め検討。その際には、空き地・空家の活用やまちづくりなどの視点も必要。

6月7日に閣議決定された「骨太の方針2022」における地域共生社会に関する記述も見てみます。

●重層的支援体制整備事業など市町村における包括的支援体制の整備を進めるとともに、コロナ禍によって顕在化した課題等に的確に対応するため、生活に困窮する者への自立相談支援等の強化を図る。

●認知症施策推進大綱に基づき、認知症サポーターが地域で活躍できる場の整備等認知症の人や家族に対する支援を推進するとともに、第二期成年後見制度利用促進基本計画に基づき、成年後見制度を含めた総合的な権利擁護支援の取組を推進する。

●障害者の就労や情報コミュニケーション等に対する支援、難聴対策、難病対策等を着実に推進する。感染症による不安やうつ等を含めたメンタルヘルスへの対応を推進する。

●性的マイノリティに関する正しい理解を促進するとともに、社会全体が多様性を受け入れる環境づくりを進める。

●地域と学校が連携したコミュニティ・スクールの導入を加速するとともに、夜間中学の設置、医療的ケア児を含む障害のある子供の学びの環境整備、障害者等の様々な体験活動やこれを含む生涯学習を推進する。

●ユニバーサルデザインの街づくりや、交通事業者の接遇向上、高齢者障害者等用施設等の適正な利用の推進などの「心のバリアフリー」の取組を進めるとともに、利用者負担の枠組みも活用した鉄道等のバリアフリー化を推進する。

●独居の困窮者・高齢者等に対する相談支援や医療・介護・住まいの一体的な検討・改革等地域共生社会づくりに取り組む。

「議論の中間整理」で強調された「住まい」は「骨太の方針」にも盛り込まれました。一方、地域共生社会の実現で役割が期待される「ソーシャルワーカー」は記載されませんでした。

地域共生社会に関する厚労省内の担当は社会・援護局であり、地域共生社会の構成要素である地域包括ケアシステムについては老健局が管轄してきました。

私はこれまで再三主張しておりますが、老健局や社会・援護局といった組織の垣根を越えて、全世代型の医療・介護・福祉による街づくりを展開していくべきである。そのためにも地域共生社会基本法のような指針が必要だと考えています。

提言1 高齢者同様、小さなお子さん、障害や精神科疾患を持った方、孤独・孤立・引きこもり、貧困で悩む方も含めた地域共生社会を実現するため、厚生労働省の中に横断的な組織を設置する。

提言2  全世代型の医療・介護・福祉による街づくりに向け、地域共生社会基本法を制定して国の指針を明確にする。