Ando Weekly 2022.7.3

病気やけがで医療機関に入院したときは、療養の給付とあわせて食事の給付が受けられます。一般的な入院時食事療養費は1食640円ですが、平均的な所得の方の自己負担額(標準負担額)は460円です。

物価の上昇が止まりません。下図は2020年を100とした時の消費者物価指数の推移(総務省)ですが、2022年5月の総合指数は101.8、食料品が102.6、電気代に至っては117.8まで急上昇しています。

こうした物価高騰を受けて、病院給食が採算悪化に見舞われています。

現在、1日当たりの入院時食事療養費は640円/食×3食=1,920円ですが、1994年に1日1,900円で制度が導入されて以来、1997年に消費税対応(3%→5%)で1,920円になったものの、25年間ほとんど変わっていません

さらに、2006年度診療報酬改定において、1日当たりから1食当たりの算定に変更されたほか、特別食加算が引き下げられた(350円/日→76円/食(228円/3食))ため、大きな影響を受けました。例えば夕食を食べずに退院した場合、従来は1日分1,920円を請求できましたが、2006年度からは2食分1,280円しか請求できなくなりました。下図は食事療養費の合計額を見たものですが、2006年には約2割も減少しました。

レストランやファストフード等では、食材や光熱費の上昇分を販売価格に転嫁することで利益を維持することが可能です。これに対し、医療機関の場合、公定価格である入院時食事療養費を自らの判断で上げることができず、コスト上昇分がそのまま利益を圧迫しているのです。

診療報酬改定では毎回、病院団体から入院時食事療養費の引き上げが要望として出されていますが、食事療養費のアップは国の財政面に与える影響が大きいということで見送られてきています。

足許の物価上昇による打撃は大きく、次回診療報酬改定まで待たずに何らかの対策が必要である、との要望が日本病院団体協議会四病院団体協議会からも出ています。

入院中の食事は、低栄養の回避はもちろん、患者さんの満足度を向上させる大きな要素です。政府の「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」の下、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」等を活用して、病院給食の質を維持するよう、政府や自治体に求めていきたいと思います。

提言 物価高の中でも病院給食の質を維持できるように「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」等を活用する。