Ando Weekly 2021.12.26

新聞等でよく目にする「診療報酬」とは、患者さんが保険証を提示して医師から受ける医療行為に対して、保険制度から支払われる料金を指します。診療報酬は医療の進歩や世の中の経済状況とかけ離れないよう通常2年に一度改定されます。次回改定は2022年4月になります。

下図は2022年度診療報酬改定のスケジュールを見たものですが、先週お示しした通り、すでに社会保障審議会で「診療報酬改定の基本方針」が決まりました。この基本方針と、内閣の予算編成過程で決まる改定率を受け、中央社会保険医療協議会(中医協)で個別項目ごとの改定内容を詰めることになっています。

こうした中、12月22日の大臣折衝で、2022年度の診療報酬改定の改定率が正式決定されました。

診療報酬本体については、全体で+0.43%で、内訳は次の通りです。使い道が指定されない真水分は+0.23%(医療費ベースで735億円増)となっています。

用途

改定率

医療費(2019年度)ベース

看護の処遇改善

+0.20%

+639億円

不妊治療の保険適用

+0.20%

+639億円

リフィル処方箋

▲0.10%

▲320億円

小児の感染防止加算の期限

▲0.10%

▲320億円

真水分(用途の指定なし)

+0.23%

+735億円

合計

+0.43%

+1,374億円

また、今後の改革の論点として、次の7項目が明示されました。
①    医療機能の分化・強化、連携の推進に向けた、提供されている医療機能や患者像の実態に即した、看護配置7対1の入院基本料を含む入院医療の評価の適正化
②    在院日数を含めた医療の標準化に向けた、DPC制度の算定方法の見直し等の更なる包括払いの推進
③    医師の働き方改革に係る診療報酬上の措置について実効的な仕組みとなるよう見直し
④    外来医療の機能分化・連携に向けた、かかりつけ医機能に係る診療報酬上の措置の実態に即した適切な見直し
⑤    費用対効果を踏まえた後発医薬品の調剤体制に係る評価の見直し
⑥    薬局の収益状況、経営の効率性等も踏まえた多店舗を有する薬局等の評価の適正化
⑦    OTC類似医薬品等の既収載の医薬品の保険給付範囲の見直しなど、薬剤 給付の適正化の観点からの湿布薬の処方の適正化

今回の改定率については、地域医療の確保や質の向上のための財源として本体0.43%のプラスを確保することができたと評価する声が多く聞かれます。私は再三、財務省が前提とする医療費(医療機関の収入)と医療経済実態調査の考え方には矛盾点が多くあることを述べてきましたが、プラス改定を維持できたことは医療界にとって朗報です。
注目されていた「看護職員の処遇改善」については、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、10月以降収入を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げるための処遇改善の仕組みが創設されることになりました。この点、介護報酬において介護職員の処遇改善が拡充されるにつれて、報酬の基本的な部分であるサービス費が削減されてしまったという指摘があります。診療報酬で同様のことが起きないよう、十分に留意しておく必要はあると思います。