Ando Weekly 2022.2.6

国勢調査は、我が国に住んでいるすべての人と世帯を対象とする国の最も重要な統計調査です。国勢調査から得られる様々な統計は、国や地方公共団体の政治・行政において利用されることはもとより、民間企業や研究機関でも広く利用され、そのような利用を通じて国民生活に役立てられています。

総務省は2021年11月30日、2020年国勢調査の確定値を公表しました。2020 年 10 月1日現在における我が国の人口は1億2,614万6千人と、2015年比▲0.7%減、5年間年平均▲0.15%の減少となりました。

見逃せないのは、生産年齢人口(15~64歳)の減少スピードです。国勢調査における生産年齢人口のピークは1995年の約8,716万人ですが、2020年には約7,508万にまで減少しました。1995年から2020年の25年間において、生産年齢人口は実に約1,200万人も減少していたのです。

足許で2040年問題の予兆が現れているということです。2040年までの人口構造の変化を見ると(下図)、いわゆる団塊の世代が全員75歳以上となる2025年に向けて高齢者人口が急速に増加した後、高齢者人口の増加は一旦緩やかになります。一方で、すでに減少に転じている生産年齢人口は、2025年以降さらにマイナスピッチを加速させ、2040年までに1,000万人以上も減少すると推計されています。

私が担当副会長を務める、全日本病院協会の病院のあり方委員会では、昨年1年間かけて、2040年の人口・社会構造、経済・財政、環境問題、医療イノベーション、就業・住まい・経済力等を想定した上で、理想的な医療保険制度と医療介護提供体制について議論しました。

議論の詳細は2021年版・病院のあり方に関する報告書をご参考いただきたいと思いますが、主な主張をご紹介します。

●医療保険には、被用者保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度があるが、簡素化、一本化すべき。

●各国の医療保険制度は参考にすべきだが、それぞれの歴史背景は異なり、日本の国民皆保険制度は維持されるべきである。

社会保険システム(ビスマルク・モデル) 社会保険方式である国民皆保険制度が基本 ドイツ:国民の約9割が公的医療保険「地区疾病金庫」と「企業疾病金庫」に加入。税金での補填なし。ほとんどの国民はかかりつけ医を持ち、事実上のホームドクター制

フランス:100%近い公的医療保険加入率。自己負担なしで外来受診可能。二次診療はかかりつけ医紹介なしだと5割負担

国営システム(ビバレッジ・モデル) 国民から徴収した税を財源として、国が全面的に医療サービスを提供する保険制度 イギリス:国営病院で働く専門医も全て公務員。外来/入院診療、調剤・歯科診療・予防医療・リハビリ等がサービス対象。ホームドクター制度

スウェーデン:自己負担は年間1人1万円が上限で、それ以外は公費

その他 民間保険が主体のシステム 米国:高齢者を対象とするメディケアと低所得者が加入できるメディケイド等の公的医療制度は限られ、その他の現役世代は民間の医療保険に加入。約5,000万人は保険未加入者

●現役世代と高齢者の人口比率問題が解消される2040年以降には、現在抱えている格差は縮小することが期待される。

今回は、医療制度の柱の一つである「医療保険制度」をご紹介しました。次回は、もう一つの柱の「医療提供体制」について、全日本病院協会が提唱する「地域包括ヘルスケアシステム」を解説したいと思います。