Ando Weekly 2022.4.10

社会保障制度は、国民の「安心」や生活の「安定」を守るセーフティネットで、子どもから子育て世代、お年寄りまで、全ての人々の生活を生涯にわたって支えています。

 

今週は、2022年度に実施される、社会保障制度の主な変更点をご紹介します。

 

〇年金関係

2020年通常国会において「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が設立しました。

●2022年4月実施

在職老齢年金制度の見直し

60~64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、現行の28万円から65歳以上と同じ47万円に引き上げ

受給開始時期の選択肢の拡大

60歳から70歳まで選択可能な年金受給開始時期の上限を75歳に引き上げ

在職老齢年金制度は65歳以上と65歳未満に分かれますが、65歳未満が見直されます。減額される基準額(月収+年金)が28万円から47万円に引き上げられることで、適用対象者が37万人から11万人程度に減少すると推計されます。

受給開始時期は現行の70歳から75歳へと繰り下げられますが、75歳を選択した場合の年金額は基準(65歳)より84%増加する計算になります。

●2022年10月実施

厚生年金(被用者保険)の適用範囲の拡大

厚生年金の適用対象とすべき事業所の企業規模要件を500人超から100人超規模に引き下げ

厚生年金の適用拡大

5人以上の個人事業所への適用業種に弁護士・税理士等の士業を追加

厚生年金の在職定時改定の導入

在職中の老齢厚生年金受給者について、1年間の保険料納付実績を毎年1回、10月分の年金額から反映

短時間労働者への適用拡大は、2022年10月に100人超、2024年10月に50人超と段階的に適用されます。中小企業で働くパート社員等の約65万人が厚生年金に移行するとみられています。

個人事業主の事業所の適用業種見直しについては、今回の改正では、弁護士や税理士、社会保険労務士等の士業のみ適用対象に加えられることになりました。

就労長期化に対応するため、「在職定時改定」が導入されます。これまでは、厚生年金をもらい始めた後も保険料を支払う65~70歳については、退職等で加入資格を失った際にまとめて年金額を見直す仕組みになっていますが、改正後は、厚生年金の保険料を支払う加入期間中でも1年に1度、年金支給額が見直されることになります。

 

〇医療関係

2021年通常国会において「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が成立しました。

●2022年4月実施

診療報酬改定

医療提供体制の改革

新興感染症等にも対応できる医療提供体制の構築

医療計画にも新興感染症等への対応を位置づけ

大病院の定額負担の拡大

紹介状なしで外来受診した場合に定額負担が必要になる医療機関の対象範囲を拡大

他の医療機関からの文書による紹介がない患者が大病院を外来受診した場合に初診時5,000円・再診時2,500円以上(医科の場合)の定額負担を求める制度について、「一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関」も対象に加えられました。定額負担額は、初診2,000円、再診500円引き上げられ、同額が保険給付範囲から控除されることになりました。

●2022年10月実施

後期高齢者の自己負担割合

一定以上の所得を有する後期高齢者の医療費の窓口負担割合を2割に引き上げ

課税所得が28万円以上(所得上位30%)かつ年収200万円以上(単身世帯、複数は320万円)の方を2割負担の対象で、対象者は約370万人と推計されます。

 

〇少子化対策関係

2021年通常国会において「子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律」が成立しました。

●2022年4月実施

診療報酬改定

不妊治療への保険適用を実施

不妊治療等への支援については、少子化社会対策大綱(2020年5月29日閣議決定)で「適応症と効果が明らかな治療には広く医療保険の適用を検討し、支援を拡充」とされていました。

 

 

●2022年10月実施

育児休業保険料免除

同一月内に2週間以上の育休を取得した場合に当該月の保険料を免除

育児休業中の社会保険料の免除期間は「育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間」であり、月途中に休業を取得した場合に免除されないという問題がありました。

 

2022年度からいわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に入り始め、2025年度にはすべてが後期高齢者となる。さらに2040年度にかけて、高齢者の増加が頭を打つ一方、高齢者を支える現役世代が急速に減少していきます。

そもそも社会保障制度は、自助を基本としつつも、避けられないリスクを皆で支えるために互助があり、自助や互助を共同化・制度化したのが共助=社会保険で、それを補完するのが公助=税(制度としての共助と公助が社会保障を形成)です。今一度、社会保障制度が国民相互の支え合いを本質としていることを認識し、給付と負担の見直しや、世代間の格差是正といった難問に取り組んでいきたいと思います。