Ando Weekly 2022.5.15

財政制度等審議会は、財務省の審議会等の一つで、予算や決算をはじめとする国の財政について審議を行う財務大臣の諮問機関です。いくつかの分科会が組織されていますが、財政制度分科会は、国の予算、決算及び会計の制度に関する重要事項を所掌しています。

4月13日に開催された財政制度分科会では社会保障が議題として取り上げられ、その中で「新型コロナ感染症への対応」が議論されました。

下表は、新型コロナ感染症について、これまで医療提供体制等の強化のために行われた支援策をまとめたものですが、合計で約16兆円の国費が投入されました。

こうした支援策は医療機関の経営状況にも影響を及ぼしていますが、見逃せないのは、公立病院と民間病院とで大きな差が出ていることです。

財務省の資料によれば、民間病院の損益率は、2019年度の1.8%から、2020年度はコロナ関連補助金を含む数字で2.3%と若干の増収となっています(補助金を除くと0.1%と収支トントン)。

これに対し、公立病院の経常利益は、2019年度に▲1,000億円程度の赤字だったが、2020年度には1,000億円を超える黒字に転じており、財務省の言葉を借りれば「従前と様変わり」となっているのです。

公立病院に対しては、平時でも年間7,000億円前後の繰入金が投入されています。私はかねてより、公立病院は民間病院では難しい医療を担うべきであると主張してきました。第8次医療計画(2024年度から2029年度まで)や地域医療構想の中で、新興・再興感染症対応をどのように取り込んでいくか、公立と民間の役割分担をどうすべきかを考えていかなければなりません。その際の考え方として次のような提言をしたいと思います。

提言1 感染症対策を含めた政策医療の提供体制について、診療アウトカムや費用対効果等の指標に基づいた議論を行い、自治体が政策医療を公立病院からも民間病院からも公募できるようなイコールフッティングの仕組みをつくる。

提言2  公立病院への繰入金の資金使途を明確にし、一般医療については、公立病院しか存在しない地域は別にして、民間病院へ優先的に担ってもらう。