Ando Weekly 2022.5.29
地方公営企業とは、都道府県や市町村等の地方公共団体が住民の福祉の増進を目的として設置し経営する企業を指します。一般行政事務に要する経費が賦課徴収される租税によって賄われるのに対し、公営企業は提供する財貨又はサービスの対価である 料金収入によって維持されています。上・下水道、病院、交通等の事業ごとに経営成績及び財務状態を明らかにして経営すべきものであることに鑑み、事業ごとに特別会計が設置されています。
2020年度の地方公営企業の決算概要(総務省)から公立病院623事業の決算を見てみたいと思います。
2019年度 |
2020年度 |
対前年比 |
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総収入 |
52,070億円 |
55,286億円 |
+3,216億円 |
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医業収入 |
43,161億円 |
40,901億円 |
▲2,260億円 |
収益的収入への繰入金 |
6,303億円 |
6,493億円 |
+190億円 |
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補助金 |
231億円 |
4,926億円 |
+4,695億円 |
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その他 |
2,375億円 |
2,965億円 |
+590億円 |
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総費用 |
53,054億円 |
53,919億円 |
+865億円 |
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収支額 |
▲984億円 |
1,367億円 |
+2,351億円 |
2019年度から2020年度にかけての増減額に注目すると、まず、医業収益は、コロナ禍での患者さんの受診控えが影響して、▲2,260億円のマイナスになりました。この減収を大きく上回る補助金が前年比+4,695億円も投入された結果、収支額(民間病院の経常利益)は+2,351億円もの増益になりました。
2021年度の決算は集計中ですが、大勢は2020年度と変わらないのではないかと予想されます。
ただ、わが国の経済財政活動が徐々に「Withコロナ」へと転換する中にあって、いつまでも補助金に頼れないこと、患者の受診控えが従前に戻ることを期待できないこと、を考えると、2022年度以降、かつての赤字基調に逆戻りしてしまうとの懸念も拭い切れません(仮に2020年度において補助金収入がなければ、▲2,575億円の赤字という計算になります)。
最後の頼みの綱である繰入金を見ると、引き続き、8,000億円を超える高い水準にあります。
2019年度 |
2020年度 |
増減額 |
|
収益的収入への繰入金(再掲) |
6,303億円 |
6,493億円 |
+190億円 |
資本的収入への繰入金 |
1,967億円 |
2,001億円 |
+34億円 |
繰入金合計 |
8,270億円 |
8,494億円 |
+224億円 |
地方公共団体は、地方公営企業法に基づいて、一般会計から病院に対して繰り出しを行なっています(会計上「他会計繰入金」と呼ばれます)。この際、総務省から地方公共団体に対して繰出基準(項目と繰出額の計算例)が示されていますが、あくまで例示に過ぎず、地方公共団体が基準を超えて繰り出しを行なうことが可能になっている点に留意しなければなりません。
地域医療構想ワーキンググループ等の会議において「調整会議で公立・公的病院への補助金の種類や金額、その資金使途等が公開されていないことが多い」との意見が出ています。病院団体等からも公立病院への繰入金の仕組みがよく分からないとの声をよく聞きます。
公立病院への繰入金について、金額の計算方法、個別医療機関ごとの金額(周産期や精神等の内訳)等を分かりやすく公表する仕組みが必要だと感じています。また、周産期や精神等の政策医療ではなく、一般医療(地域包括ケア病棟等)の赤字が繰入金によって補てんされているケースもあると聞いており、そうした場合、一般医療は民間医療機関にシフトさせるべきではないかと考えています。
私は、2019年3月13日の厚生労働委員会をはじめ、2021年2月26日の予算委員会第五分科会(当委員会での質問によって公立病院への繰入金が2018年度で8,266億円に及ぶことが国会で初めて明らかにされました)、2021年4月6日の総務委員会等の場で、公立病院への繰入金の明確化、公立病院と民間病院の役割分担について訴えてきましたが、改めて次の提言をしたいと思います。
提言 公立病院への繰入金の資金使途、特に一般医療の赤字補填に提供されている繰入金の金額を明確にする。一般医療については、公立病院しか存在しない地域は別にして、イコールフッティングにより民間病院へ優先的に担ってもらう。 |