Ando Weekly 2022.2.20

医療機関にて繰返し診察を受けなくても一定の期間は薬局で同じ薬を受け取れる処方箋を「リフィル処方箋」と言います。

2022年度診療報酬改定において、リフィル処方箋が導入されることになりました。

リフィル処方箋の概念そのものは従来から議論されており、2010年3月の「チーム医療の推進に関する検討会報告書」において、薬剤師の業務範囲・役割の拡大として「繰り返し使用可能な処方せん(いわゆるリフィル処方せん)の導入」が提唱されたのが嚆矢とされています。

その考え方は、2016年の調剤報酬で「医師の指示による分割調剤」という形で導入されました。分割調剤とリフィル処方箋の違いを、例えば、90日分の薬を30日分ずつ患者に渡す場合で説明すると、下表の通りです。

医師

薬剤師

処方箋

分割調剤

90日分の処方箋を発行し、薬局に3回の分割を指示 医師の指示通り、30日分ずつ処方

3枚

リフィル処方箋

30日分の処方箋を、繰り返し利用できる回数3回を記載した上で発行 医師の指示通り、30日分ずつ処方

1枚

2021年7月14日の中医協では、「分割調剤の手続きは明確化されたが、十分に活用されているとは言い難い」との課題が提示されました。

委員からは、「手続きが非常に煩雑である点が活用の妨げなのではないか」「抜本的な見直しが必要」「生活習慣病など病状の変化が少ない患者などを対象に処方箋を繰り返し利用できることも選択肢とすべき」といった意見が出ました。

こうした議論を経て、今般の診療報酬改定において、「症状が安定している患者について、医師の処方により、医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できるリフィル処方箋の仕組みを設ける」とされたのです。

リフィル処方箋は普及するでしょうか。リフィル処方箋のメリットとデメリットをまとめてみました。

メリット

デメリット

患者

時間や金銭面の負担軽減 症状の変化を伝える機会が減り、重篤化するリスク

医師

外来時間の短縮

患者1人当たりの診察時間増

外来患者減による収入減

患者の重篤化の見落とし

薬剤師

かかりつけ機能の重要度向上 かかりつけ医との連携の必要性

医療費削減 国民の重篤化リスク

こうしてみると、メリットとデメリットの両面があり、リフィル処方箋が根付くか否かは、今しばらく様子を見る必要がありそうです。

2020年に発表された論文「リフィル処方制度導入がもたらす経済性の効果予測」(社会薬学Vol.39)によれば、リフィル処方箋にする必然性が高いと見込まれる患者における医療費削減効果は339億円に上るとされており、国にとっては相応のメリットが見込まれる制度と言えます。

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